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未来予測:AIによる「人格代理サービス」の時代がくる

2023-09-21  𝕏 シェアする


▎覚えてますか?「ライフログ」

ライフログ(Life Log)という言葉が以前流行しました。
個人の日常の出来事、行動履歴などを記録・蓄積することを意味しており、ウェアラブルデバイスとの関連で耳にすることは、まだ多いかと思います。主にフィットネスの運動や、体重の管理などです。

このライフログは現在もGoogleやAppleなどによって積極的にデータが収集されています。しかし、まだそれが統合された形にはなっていません。それは主にアプリごとや事業者ごとにデータが区切られているためです。
もし、このライフログを、アプリ横断的に集約できるようになればとても便利になることは想像しやすいと思います。


▎AI+ライフログ

さて、ライフログがさらに充実するとどのような可能性が広がるのでしょうか。
その答えは、AIの活用により優れた「体験」を創出できる点にあります。AIに自身のライフログを学習させることで、個人の趣味や嗜好、行動パターンを理解した「人格代理」モデルを構築できるのです。

このモデルの応用範囲は非常に広いです。

例として書籍をあげましょう。毎月、沢山の本が発売されます。それらをすべて読むのは不可能ですし、チェックするだけでも大変です。
そこで、人格代理モデルに、代わりに本を読んでもらうのです。あなたに代わって、★をつけてもらうことも感想を書いてもらうことも可能です。

そして、あなたは評価の高い本だけを、しかも、その感想(つまり評価の理由)とともに知ることができます。これによって、大幅に新刊書チェックの時間を減らすことができます。

別の見方をすれば、レコメンデーション(おすすめ)の一種とも言えますが、これまでのものとは一線を画します。仮にあなたが観たとしたら、★4つで、こういう感想を持つよ、と出てくるのですから。



▎人格代理AIがコンテンツを選別してくれる

映画やドラマにおいても同様です。あなたの代わりに、人格代理AIに観てもらう。そして、面白いものだけを実際に観る。時短を重視する現代において、これが次なるライフスタイルの形となるでしょう。

もちろん、実際に観たら、観たという情報がまたライフログに蓄積されます。あなたが感想をSNSに投稿すれば、ライフログを経て、AIが学習します。AIは、ますます「あなた」に近づきていきます。

さらに、広告の配信も進化します。
あなたが興味を示すコンテンツだけが選りすぐって配信されるようになり、その精度は今よりもずっと高まります。興味を持つコンテンツのみが提示されるのであれば、それはもはや広告ではなく、有益なコンテンツです。

この変化は広告制作の側にも影響を与えます。
視聴者の興味を引きつけるための過度な演出が不要となり、例えば、マーケティングのアプローチ「AIDMA」においても、「注目(Attention)」と「興味(Interest)」の段階が省略可能となります。
これが新しい時代のマーケティングへの変遷と言えるでしょう。



▎コミュニケーションも変わる

この人格代理AIは、あなたの代わりに会話もしてくれます。なにせ、LLMベースですから、会話は得意です。ChatGPT は、みんな共通の情報しか持っていませんが、人格代理AIは、あなたのことを知り尽くしているため、「会話の代理」を任せることができます

例えば、友人と食事の計画を立てる場合を想像してみてください。通常だと「どこに行く?」や「いつ行く?」といった多くのやり取りが必要になり、特にお互いの好みにこだわると会話が長くなり、ダルいです。

そこで、(あなたと友人の)人格代理AIどうしをコネクトします。すると、AIどうしでたくさんの会話をバックグラウンドで行ってくれるのです。とことんまで。
そして、AIからは、二人が合意しそうなお店とスケジュールの選択肢が提示されてきます。いずれも、二人の好みをバランスよく満たしています。友人とあなたは、選んで決めるだけです。



▎あたらしい会議のカタチ

さらに、このAI同士のコネクトは2人だけに限定されません。
複数の人格代理AIを同一のテーマで連結させると、バーチャル会議が開始されます。

この方式では、参加者はリラックスしてお茶を飲みながら結果を待つだけです。そして、整理された「議事録」が最初に提供されます
この議事録には、議論の要点がまとめられていて、あとは、その論点をもとに、深い議論だけを行えば、時間効率はさらに高いものになるでしょう。

この方法の利点は、時間の節約だけにとどまりません。従来の会議では参加者の体調や気分、声の大きさによって議論の流れが不安定になりがちですが、このAIによる方法ではそういったバイアスが排除され、より公平かつ効果的な議論が期待できます。

民主主義自体も変容するかもしれません。



▎ベクトル化で個人情報の問題を解決

さてここで、AI技術における「ベクトル化(Embedding)」という手法について触れましょう。

これは、情報の内容を一連の数値に変換するという手法です。
例えば、
赤い花は「0.6、-0.7、0.1、0.6」
白い花は「0.6、-0.1、0.3、0.6」
などのようにです。実際は、数字が1000個以上並びます。

さて、蓄積されたあなたのライフログをベクトル化してみたらどうでしょうか。そうすることで、あなたの趣味や行動パターンを表す数値の列を作成することができます。これを「人格ベクトル」と名付けましょう。

この人格ベクトルは単なる数値の列であり、あなたの個人情報や具体的なライフログデータを含んでいません。さらに、これを逆算して個人情報を取得することもできません。つまり、「人格ベクトル」はあなたの個性をふんだんに盛り込んでいるけれど、あなたの具体的なプライバシー情報は漏れないデータとなるのです。

これを各サービス事業者に提供することで、高精度のレコメンデーションを受けることができ、コンテンツも最適化されます。将来的には、この「人格ベクトル」の流通が大きな市場を形成する可能性があります。



▎わたしの取り組み

これらのアイデアで特許を取ろうと思い、専門家のチェックも受けました。しかし、新規性・実現性の面が弱いので断念し、本コラムで公開(公知の状態に)しました。したがって、誰でも自由にこの考え方を利用できますし、誰も同じ内容で特許を取得できません。
研究してわかったこととして、このアイデアを実現するには、いくつかの大きな課題が立ちはだかっています。

第一に、ライフログを、アプリ横断的に集約できなければ始まりません。
これには、解決アイデアがあります。他社のアプリが本件AIに行動履歴データを渡すと、報酬として、本人の最新の「人格ベクトル」を受け取れるというエコシステムを作ればよいのです。

第二の課題は、ライフログのデータの品質です。
多くの異なるアプリの、多種多様な行動履歴が大量にあるとデータが混沌としてしまう可能性があります。解決するには、行動履歴の要約、重要度による分類などが有効だと思います。

最後に、AIがデータを適切に学習できるかという問題があります。
私は、LLMのファインチューニングという手法で実験しましたが、結果として、個別の人物(あなた本人)に関する学習はうまく進みませんでした。LangChainのようなツールを使えば、多少できるかもしれませんが、その場合は特許になりにくいですし、膨大になりそうなライフログデータが課題となります。



▎将来に起こること

今後、AI技術がさらに進化するとともに、先述の課題が解決されることを期待しています。そして、「人格代理AI」「人格ベクトル」などといった、「人格テクノロジー」が現れるのだろうなと予想します。

さらに進んで、ファインチューニングなどの手法によって「ひとり1LLM」の時代に移行していくことでしょう。(そして、そのLLMがあなたの手のひらの中(スマホ)に収まる日が来ます)



人格ベクトル、人格代理AIの図

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